USBの限界:HDDを多く接続できない

一般的なPCケースですと、3.5inch HDDは搭載できても10台ぐらいが限度です。(個人的には以前に投稿したNANOXIA Deep Silence 6 Rev. Bケースを使って19台搭載したことはありますが・・・)

それ以上のHDDを接続したいとなると2つの問題が出てきます。

  1. SATAのポートが足りなくなる。
  2. HDDを入れるケースが無い。

最初に思いつくのは、USBによって拡張する方法でしょう。古いUSB、具体的にはUSB2.0程度の機能では安定動作しません。ただのUSB3.0でも無理です。

これは元々USB自体がHDDの高速転送を視野に入れた仕様ではなかったためです。数年前にこの問題を解決するためにUSB3.0にUASPというプロトコルが追加されました。これによりUSB接続によるHDDの運用はパーソナルベースでは可能になりました。

UASP対応USB3.0を搭載している外部HDDケースで最大のものはセンチュリー様お取り扱いの「裸族のスカイタワー 10Bay IS」です。このケースはHDDの冷却もかなり考慮されており、巷にある多くのケースの中でもかなり良いものです。

詳しい方はこのスカイタワー 10Bayに一つ前のモデルが販売されていたことをご存知かもしれません。そのモデルはUASPに対応していない代わりにeSATAコネクタを搭載していました。eSATAのホスト側にスイッチング機能があれば、ケース側のeSATAインターフェースが1本のSATA信号を10個のHDDへ自動的に切り替えてアクセスできるというものでした。しかしこれもかなり相性問題があり、更に言うと10個のHDDをつなげることはできてもトータルの速度は単純計算で3Gbps止まりでした。実際にはもっと様々な速度ペナルティが発生します。

UASPに対応することによってHDDのアクセス速度はかなり向上しましたが、ここで、現在のUASP対応型の裸族のスカイタワーの内部構造からUSBの限界を考察します。

ご存じの方はUSBデバイスは256台までつなげることができることを知っておられると思いますが、それは途中にUSBハブをつなげることによって可能になっています。USBハブは特殊なものを除いて1つの線を4本に拡張する役割を持ちます。逆を言いますとUSBハブがなければ必ず1対1の通信となります。ということは、10台つなげるHDDケースがあったとしたら、内部でUSBハブも使っているはずです。

実際にUSBのトポロジーを解析したところ、裸族のスカイタワーの内部構造は以下の図の通りでした。

問題は、このUSBハブにあります。理論上、USBハブがあっても何の問題も起きないはずです。ところがUSBハブがPCとの間に入れば入るほど動作が不安定になります。これは理論がどうのこうのの話ではありません。いわゆる「相性」で片付けられてしまう、通信のタイミングエラーやタイムアウトが発生しやすくなるのです。すごく安いどこの製品化もわからないマルチカードリーダーを使った時、すぐ切断されてしまったという経験はありませんか?あれです。

裸族のスカイタワーも例外ではありません。USBを利用した多接続のHDDケースとしてはかなり安定している部類ですが、複数のHDDに対してリード・ライトをさせると切断されてしまいます。これはセンチュリー様が悪いのではありません。HDDをたくさん接続させるためにUSBを使うのがいけないのです。

PCのUSBコネクタが足りないからと言って、このケースの前段にUSBハブをつなげたらもっと不安定になります。言ってしまえば、HDDとPCの間にUSBハブを付けた時点で不安定さを覚悟しなければなりません。

正しい解決方法はSASホストバスアダプタとSASエキスパンダカードを利用する方法です。次回、その方法をご紹介します。