基本的なエアフローを考える
結論から書きます。後ろから前です。
M/BとPSUを考えていますか?
商品写真は(試作バージョンですが)これです。
これを見た時の空気の流れはどちらに設計したいと思いますか?取っ手のついている方向から後ろに搭載した電源の方向に風を送り、2つの12cmFANから排気することを考えるでしょう。
では、内部構造を図にしました。左側が取っ手のついているいわゆる前方、PSUがついている方が後方です。
さて、どうでしょうか。前方から後方へ風を送ると次の図のようになりますね。
GPUで暖められた熱はPSUとM/Bを通ります。この図ではわかりませんが、M/B周辺の配線やGPUへの電源線、PSU自体が熱を逃がす障壁になります。よって、M/BやPSU周辺温度は高くなります。
PSUに関してはこう考えるかもしれません。
「PSUにはFANがついている。吸気口が近ければ外の空気を吸ってくれるに違いない」
吸ってくれません。
- PSUについているファンの風力がどれだけか仕様で明記されていますか?
- PSUのファンはいつ回ると仕様で明記されていますか?温度ですか?負荷ですか?この時のPSUの周辺温度は何度で設計されているでしょうか。
PSUのファンはおまけのようなものです。昔と違い、ケース内空気を逃がす役割がなくなったPSUの設計は静音化にシフトしています。つまり、理想的な周辺温度でPSU自体が発する熱を付属のFANで排熱することしか考えられていません。周辺温度が過酷な場合にFANが回る設定ができるのはSeasonicの電源だけだと思います。
そのようなFANですから、近くに吸気口があっても、周辺にある熱い空気を吸うだけです。吸気口は排熱口として作用するでしょう。
では、空気の流れを逆にしてみましょう。
マイニングにおいて、M/BとPSUの発する熱はGPUに比べれば些細な量です。であるならば、発熱された空気はさっさと排気するべきです。
もちろん、この図において前面FAN x3 ≦ 後方FAN x2 の風量が必要なのは言うまでもありません。
GPUFANの「風圧」
流体力学では流量と流圧があります。ここでは風に置き換えているので風量と風圧と言い続けています。
FANも風量と風圧のどちらを優先するか仕様で決まっています。ヒートシンクやラジエターを冷やすときは風圧を重視するFANを使います。なぜなら、風の流れを妨げる障害物があるのですから、いくら空気が周りにあっても空気が流れなかったら冷えないからです。当たり前のことを書いてしまいました。
ところが、この当たり前が罠なのです。ここで、前方から後方へ風が流れる時の図をもう一度見てみましょう。
仮に、風量がとても多ければ、この構成でも運用できるかもしれません。なぜなら、GPUで発せられる熱は瞬間的には多くないのでPSUもM/Bも耐えられるかもしれません。
しかし、誰もが忘れていることがあります。GPUの風圧重視のFANを・・・
この図ではGPUから排気FANまで距離がありますね?ここでGPUのFANを回すと次の図のように熱せられた空気が逆戻りします。
ここの考え方の不足が、多くのケースメーカーが動きもしないマイニングケースを作り、売り、消費者がババをつかまれた理由です。
GPUについているFANは「風圧重視」だと書きました。つまり、空気の「圧」がGPUの周りにはあるのです。電気で言えば電圧が高いところです。電圧が高いところに電気は流れますね?風圧も高いところに空気が流れるんです。天気図で言うとGPUに高気圧があると思ってください。
前方のFANを超強力にしてで後方に押し出そうとしても、多分無理です。後方のFANも同様です。そもそも流体力学的に空気抵抗を考えないといけません。M/Bの上には配線がたくさんありますからここでも空気抵抗は高くなります。とてつもない風圧、風量のあるFANでも距離が遠ければFANの力は届きません。ですから、熱源が近くにある前方のFANが強力に排気するしか手がないのです。
エアフローに関しては書くことがたくさんあります。ただ、このケースを使う場合は後ろから前に風を送ると考えてください。